溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「無防備もたいがいにしねえと、“飼い主”じゃいられなくなる」
「甲斐様、お待ちしておりました」
暖かみのあるウッド調の店内に入ると、店長である三十代くらいの女性がすぐに出迎えてくれ、私たちをカウンセリング用のソファ席へ案内した。
横並びに座った私と甲斐の向かい側で、店長さんはバインダーを手に私たちに質問する。
「本日はどういったスタイルをご希望ですか?」
えーと、私としてはとりあえずブナンに……。
そんな私の心の声を、甲斐は思い切り裏切った。
「好きにしてもらって構わない。ただ、コイツの魅力を最大限に引き出してほしい」
「えっ」
しれっとなに言っちゃってるの! 私にそんな引き出してもらうほどの魅力なんて……。
不安に駆られる私が店長さんを見ると、彼女は自信たっぷりに笑みを深めて頷く。
「かしこまりました。私が担当させていただきますね」
「よろしく頼む」
そっ……そんなオーダーってありなの!? ここが青森でなく青山だから!?
内心動揺する私に構わず、甲斐はバッグから持参した文庫本を出して読み始めてしまう。
そして私はあれよあれよという間に、店長さんに促され鏡の前に連れて行かれた。
真っ白な皮の椅子に背中を預け、鏡の中で店長さんと目が合うなり、彼女はなぜか意味深に微笑む。
それから一度甲斐をちらりと振り返ると、小声で私に耳打ちした。