溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
シャンプーが終わり、再び鏡の前に座らされると、今度は店長さんのほかにもう一人、アシスタントの若い男の子が隣に立った。
「ふたりで乾かしていきますね」
まだ大学生のような幼さを滲ませた彼は、女の子みたいに可愛らしい顔をして微笑んだ。
そして店長さんとともに、私の髪の左右を分担して乾かしていく。
ふたり掛かりなら早いもんね……これからパーマもしなきゃいけないし。
単純にそう思って熱風を浴びていると、ふと鏡の奥からこちらに近づいてくる甲斐の姿が目に入った。
彼に気付いた店長さんが一旦ドライヤーを切り、振り返る。
「どうかされましたか?」
甲斐はちょっと言いにくそうに、店長さんに告げる。
「悪いけど、男のスタッフにコイツの髪を触られるのは、あまりいい気がしないんだ。できれば女性スタッフにやらせてもらえないか? 人手がないなら、あなた一人でも構わない」
な、なんで。別に、仕事なんだからいいじゃん。
「あ、ごめんなさい! そうですよね、気が付かなくて……!」
「いや、こちらこそ我儘で申し訳ない」
甲斐は男の子のアシスタントにも謝り、彼も「いいえ」と特に気分を害した様子もなく去っていった。
それを見届けた甲斐も先ほどのソファの方に戻り、私の髪を乾かすのは店長さんだけになった。
そのタイミングを見計らったかのように「ふふふふ」とにやけるのは、もちろん店長さんである。
……すごーく、いやな予感。