溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「やっぱり、愛されてますね」
そして思った通り、店長さんはだらしのない笑顔で私を冷やかしてきた。
本当に愛されてるならそもそも“ペット”じゃないと思うけど……という本心は胸の内にとどめておき、とりあえず会話を溺愛の方向から逸らそうと試みる。
「意地悪な部分も多いですけどねえ……」
苦笑しながら言ってみたけど、無意味というかむしろ逆効果だった。
「そりゃ、愛するがゆえですよ! つい苛めたくなっちゃうけど、最後はうんと可愛がってくださるんでしょう?」
可愛がる……? そういえば、ときどきこっちの調子が狂うような甘い発言や行動があるけど……。
思わず今朝のバックハグや“可愛い”発言が蘇るけれど、そんな話をしたら店長さんがますます食いついてしまそう。
「いや、決してそんなことは……」
「照れなくてもいいんですよ? おふたりの空気でわかります」
別に照れとらんわ! と明神さんよろしく内心突っ込みを入れる。
でも口に出すことはできないし、この人には何を言っても無駄だろうと諦めた私は、黙って椅子に座り続けることにした。
それにしても、甲斐のさっきの嫉妬じみた反応は何だったんだろう。
ペットの毛並みを手入れしてくれる人に対して異性も同性もないと思うんだけど……やっぱり、変な奴。