溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「どうですか? 気になる部分があったら手直ししますので、遠慮なく言ってくださいね」
満足げな店長さんに言われて、鏡の中をじっとのぞき込む。
そこにいるのは、無事にパーマも完了し、スタイリングとメイクも施された私。
その手順はずっと見ていたから、紛れもなく原型は私なんだけど……。
どちらさま? と言いたくなるほど見事に化けた自分を、穴が開くほど見つめてしまう。
「だから言っただろ。プロに頼めば、お前は綺麗になるって」
背後に立つ甲斐が自分の手柄のように褒めるから、チークでほんのり血色がよくなった頬がさらに赤みを増す。
大ぶりのロッドでつくった緩いパーマがなんだか大人っぽいし、唇は厚く潤んでいて、自分で言うのもなんだけど、色気的なものが少しは出た気がする。明神さんの服も、これなら胸を張って着られるかも。
「ありがとうございます……こんなに素敵にしてもらえるなんて、嘘みたい」
感慨深げに呟いた私ににんまり微笑んだ店長さんは、甲斐に向かってからかうような調子で話す。
「ホント可愛い方ですねぇ。ここまで自分の仕事に感動してもらったのは美容師人生初めてです。甲斐様が溺愛するのも頷けちゃう」
はっ。そういえば店長さんは何か誤解しているんだよね。溺愛うんぬんの話は、きっと私でなく前のペットさんに対してなのに……甲斐は何と答えるだろう。