溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
背後で交わされるやりとりに耳を澄ませていると、甲斐は特に否定することなく鏡の中の私と目を合わせてきた。
その瞳がまっすぐすぎて、どきりと胸が鳴る。
「基本的に世間知らずなんでね、いちいち感動が多いのは見てて楽しいですよ。あとは食い物を与えておけば従順なところも扱いやすいし、抱き心地もなかなか……」
ば、馬鹿にされてる……? いやそれよりも、抱き心地っておかしいでしょ!
「ちょっと! 誤解を与えるようなこと言わないでよ!」
思わず振り向いて甲斐を睨みつけるけど、彼に反省の色はなく、さらに平然と続ける。
「何が誤解なんだ。俺は肌の合わないヤツは最初から飼わない」
「肌とか言わない!」
それが変な意味じゃないって当事者である私にはわかっているけど、そうでない人にとってはいかにもいかがわしく聞こえちゃうでしょ!
店長さんの反応が気になってちらっと表情を窺うと、頬を赤く染めて困ったような笑みを浮かべていた。
「ほ、本当に仲がよろしいようですね」
「いや、だからそれは誤解……」
「うるさいぞ稀華、ステイ」
「~~~~~っ」
このさい「ワン!」とでも叫んでやろうかと思ったけど、店長さんをさらに困惑させそうなのでやめておいた。