溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
あまり触れてほしくない話だろうと予想して、遠慮がちに尋ねる。
しかし甲斐の横顔は特に動揺した様子はなく、一度私のほうを見て小さく笑う。
「別にいいけど……なんだよ、その“ペットさん”って」
「だって、犬や猫じゃないんでしょ?」
そんな質問を投げかけた瞬間、ちょうど赤信号で止まった甲斐が、片手でハンドルを握ったまま怪訝な顔で私を見る。
そして返ってきたのは、意外過ぎる答え。
「……いや、フツーに犬だけど」
「えっ?」
聞いていた話と違う……。だって、店長さんの話では確か。
「だ、だって、服とか買ってあげてたんじゃ」
「今どき犬に服着せるくらい別に珍しくないだろ」
そ、そうかもしれないけど……私の地元では少数派だったよ! 犬はハダカが自然でしょ!
……という持論はとりあえず脇に置いておいて。
「それに、喜んでキスしてきたって!」
「そりゃするだろ。犬は。キスどころか俺に馬乗りになってべろべろやられたよ。……つーかお前その話、さっきの店で聞いたのか? ったく、守秘義務もなにもありゃしないな」