溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
「寒くないか?」
私を見下ろす瞳も気遣う声も、温かくて優しい。
もちろんそれも“ペットとして”の扱いにほかならないのだろうけど……こっちはいちいちドキドキしちゃうんだってば!
「平気。……むしろ暑いんだけど」
ぼそっと付け足した嫌味に甲斐は気づかず、歩みを進めていく。
つないだ手から激しい鼓動の音がばれやしないかって、こっちはハラハラしてるっていうのにさ。
悶々とする私の手を引いて、甲斐がやってきたのは広い公園。
秋らしくオレンジ色に染まった木々のなかに、子ども用の大型遊具や砂場がならび、足元にはどんぐりが落ちていて、家族連れが喜びそうだ。
「いいなぁ。子どもの頃、こういう公園で遊んでみたかった」
「遊んでもいいぞ、今は誰もいないし」
「え。……それ、ほんと?」
私は目をキラキラさせて、甲斐を見つめた。
昔、近所にはホントにこういう公園がなくて、というか公園自体なくて、クマが出るような森が遊び場の野生児だった。だから、こういうきちんと整備されてる公園に憧れてたんだよね。
本当なら子どもの自分で遊びたかったけど、時間は戻せないし。……ちょっとだけ、遊ばせてもらっちゃおうかな。