溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


「ごめんなさい! お願いだから捨てないで!」

「捨てる? お前何か勘違いしてるだろ。……まあいい。暗くなってきたな、車に戻るぞ」


うう。なんか、曖昧なまま話を終わらされてしまった……。

とぼとぼ甲斐の後をついて歩く途中、ため息をついて振り返った甲斐が、行きと同じように手を差し出してきた。

今度はその意味をすぐ理解して、私も黙って自分の手を重ねる。

私がしょげているのに気づいたからだよね。やっぱり、甲斐って優しいな……。

そう再確認すると、胸の中が急にせまくなったような苦しさを覚えた。

なんだろ、これ……。飼い主を呆れさせてしまった、自己嫌悪かな?

その正体がわからないまま、最後に街の景色を眺めた。

オレンジと群青のまじりあった空と、まだ誰もいない街。静かでとてもきれいだけれど、少し寂しい風景だ。

いつかこの街がにぎやかになった頃、また散歩に連れてきてもらえたらいいな……なんて。

そのころには、私たちの関係もどうなってるかわからないよね。

そう思うとまた少し胸が苦しくなてきたので、私はそれきり先のことを考えるのをやめた。


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