溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
でも、状況が状況だからなんだか出にくい……。
そんな迷いから信音を鳴らしっぱなしの私に、甲斐が声を掛ける。
「出ろよ。大事な用だったらどうすんだ」
「……聞き耳立てないでくださいね」
「この空間でそれは無理な頼みだ」
ほんっと嫌なやつ……! 嘘でもそこはわかったとか言いなさいよ!
私はぷりぷりしながら電話に出た。
「もしもし、理一?」
『あ、まれ……? よかった、仕事中だから出らんないかと思った』
いつもの甘ったるい声とユルいテンポで話す理一に対し、私は途端に焦りはじめ冷や汗をかき出す。
どうしよう、せっかく美鈴さんに紹介してもらった高給取りの仕事をクビになっただなんて言えない……。
「う、うん。ちょっと休憩中で」
『そっか。……今すぐ帰ってくるのって、無理だよね?』
「え? どうしたの? 何かあった?」
『んー……ちょっと俺、死にそうかもしれなくて』
えっ……。どうしたのかな、具合が悪いの?
夕方私を送り出してくれた時は元気そうだったのに。