溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
『今、哲がお説教してるとこだけどさ。リーチくんもさすがに堪えたみたいよ。まさか稀華ちゃんが出ていくなんて、夢にも思わなかったみたい』
「そう、ですか……」
なんだか、私が理一を裏切ってしまったみたい……。そんな罪悪感が、ちくりと胸を刺す。
『それでさ、本人、話したがってるんだけど、どうする? もう口もききたくないっていうなら無理しなくていいけど』
一瞬迷ったけど、避けてはならないことだと思い直してすぐ返事をした。
「大丈夫……です。代わってださい」
『わかった。ちょっと待ってね』
大丈夫と言ったものの、耳の奥で、心臓がどくどく鳴っているのがわかる。
理一は今、私に何を伝えたいんだろう。昨日のこと、謝るつもりなのかな。だとしても、私はもうあの家には……。
『……もしもし、まれ?』
確かめるようにゆっくり、理一が私の名を呼んだ。途端に胸がぎゅうっと苦しくなり、私は小さく答えるので精一杯。
「り、いち……」
高校時代からの長い付き合いで、こんなに気まずいのは初めてだ。
一緒に住んでいたのが嘘みたいに緊張して、スマホを持つ手に汗がにじむ。