溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~


『……あのさ。今、誰といる?』

「え?」


焦ったような声に問われ、戸惑いながら運転席の甲斐を見やる。そういえば、彼のことはなんて説明したらいいんだろう。

ぐるぐる思いを巡らせている間に、理一が不機嫌そうなトーンで話す。


『美鈴さんは、まれが御曹司のペットになったんじゃないかって変なこと言ってるけど、そんなわけのわからないことになってないよな?』


いきなり核心を突かれて、息が止まりそうになった。

そういえば、美鈴さんはクラブで私が甲斐に拉致されるシーンを目撃しているんだ。

それに、私が東京で頼れる友達なんていないのも知っているから、自然とあの御曹司を頼ったんだと予想したんだろう。

ここで肯定したら、まるで私がすっごくダメなヤツみたい。……いや、でも事実か。

“何もしなくていい”とか“わがままでいい”とか、そんな言葉に甘えたくなってしまうほど、私は人間らしい生活に疲れて、ダメになっていたんだから。


「ホント……だよ。今、ペットなの、私」

『本気で言ってる? まれ、絶対騙されてるよ! 変なこととかされてないか?』


受け入れがたい事実なのはわかるけど、騙されている、と決めつけられて、ムッとした。

それに、“変なこと”をされてないか心配するほど、理一は私のカラダになんか、興味なかったくせに。


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