溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
本当に、いつか連絡してくることはあるのだろうか。
私はそのとき、嬉しいのかな。夢が叶ってよかったねって、笑っておめでとうって、理一に言えるのかな。……わかんないよ、全然。
静寂が訪れた車内で、目尻に少し滲んでいた涙を拭う。すると甲斐がかすかにこちらを向いて、問いかけてきた。
「……今のリーチって、ヒモ男だろ? なんだって?」
私はスマホをバッグにしまいながら、ありのままを告げる。理一の決意に、甲斐はどんな反応をするだろう。
「夢が叶ったら、私を迎えに来るって」
「虫のいい話だな。どうせ口だけだろ」
「でも、もし……」
もし本当に、夢を叶えた理一が私を迎えに来たら、あなたはどうする?
そんな質問をぶつけてみたくなったけど、口に出す勇気が出ずに黙り込む。
「稀華」
すると、隣から優しい声と衣擦れの音がして、運転席から身を乗り出した甲斐が、私の頬に手を添えた。
そして俯いていた顔を上げさせられ、視線が絡む。
普段はぱっちりとした二重の瞳が妖艶に細められ、ささやくような甘い声が至近距離で告げた。
「今は、俺だけ見てろ」
まるで独占欲を滲ませたような発言に、ドキン!と大きく心臓が跳ねる。