溺愛ペット契約~御曹司の甘いしつけ~
もう一度って言ったはずなのに……これじゃ、“一度”どころじゃないじゃん……。
さすがにこれ以上は、と手のひらで甲斐の胸を軽く押す。それに気づいた甲斐は唇を離し、ため息に似た吐息を漏らした後、ばつが悪そうに笑った。
「……悪い。お前の唇があまりに美味いから、終わるタイミング見失った」
「う、美味い?」
「鑑賞用としても楽しめるし、手で触って愛でるのもよし、ついでに食用にもなるときた。やっぱりお前は、最高のペットだよ」
再確認するように言うと、スッと私から離れて車を降りる甲斐。
けれど私は、胸の内に渦巻くモヤモヤとした感情を処理できずに車内にとどまっていた。
“最高のペット”……その褒め言葉を、物足りなく感じるのはなぜなんだろう。
食事も、服も、住むところも与えられて。そのうえ甲斐は、今までの私に欠乏していた優しさや、愛情だってくれる。挙句、あんなに甘いキスまで……。
これ以上何か望むなんて、贅沢にもほどがあるよ。
そんなことを思いながら、未だキスの感触と火照りの残る唇を軽く噛むと、胸がちくんと痛くなった。