Powder Snow
部活をみに学校へ行くと、複数の後輩たちに囲まれた。遠矢は何事だとその後輩たちに尋ねたところ、後輩たちは好奇心いっぱいの眼差しで。
「遠矢先輩、高塚先輩と付き合ってるって本当ですか?」
と訊いてきた。
「ああ、そうだけど…」
遠矢が答えると、後輩たちは一斉に遠矢に質問攻めをしてきた。
「いつからですかっ?」
「どっちからですかっ?」
「小樽の水族館まで行ってきたって本当ですかっ?」
遠矢は「えーと…」とその勢いに圧倒されたが、コホンと咳をひとつついて、質問に答えた。
「付き合いだしたのは終業式の日で、まぁ言ってくれたのは向こうだけど…水族館は行った。まだそれだけだけど」
後輩たちは「おーっ!」という奇声を発した。目がキラキラ輝いている。
「遠矢先輩、めっちゃモテるのに誰とも付き合わないから、変だと思ったンすよ」
「いやぁ最後に驚かされましたよ!」
「でもなんか感動っす。相手があの高塚先輩なら、俺、納得です!」
「遠矢先輩は、ああいう感じのひとがいいんですねー」
「そうそう、千秋先輩っぽいですもんね!」
急に千秋の名前が出て、遠矢は、平然を装いながら後輩たちの話に入っていった。
「高塚って、千秋に似てる、かな」
遠矢も同じことを思った。そう思ったのは自分だけではないのかと、確かめたくなったのだ。
「似てますよ!話し方とか、仕草とか?千秋先輩、怒ったらおっかないときありますし、しっかりしてるから気が強い感じもしますけど、素振りって言うんですか?なんか雰囲気が可愛らしいから、結局、あのひとは可愛い!ってなるんですよ。それが高塚先輩にもあるかなぁって」
「あと、髪型とか、制服の着方とか?とにかくなんとなく似てますよ!特に、あの表情とか仕草とかっ!」
「そーそー。千秋先輩、あれが卑怯っすよね!めっちゃ可愛いの!」
「ってお前、結局千秋先輩の話かよ!」
「だって俺、千秋先輩狙おうと思ったのに、遠矢先輩いるから、諦めたんだぜ。それなのに!って思うじゃん」
「千秋先輩は、遠矢先輩がいてもいなくても、お前は選ばねぇよ」
「高嶺の花なんだからな!」
バスケ部内で、遠矢と千秋が隠れて付き合っているのではないか、という噂はあった。部員たちも、キャプテンとマネージャーの関係上我慢しているだけで、実は両思いなんじゃないかと勘ぐる者もいた。
遠矢はその噂を否定しつつ、そうなればいいなと、心の中では思っていた。
千秋だけがその噂を本気で否定していたが、その理由を知っている手前、遠矢は切なくなった。
しかし、それよりも。
「似てる、か…」
千秋と美紀を似ていると感じていたのは事実だが、後輩たちまでそう言うのであれば、相当似ていることになる。
最近まで美紀の存在を知っているかどうかすら怪しかった遠矢は、そこまで似ている美紀に今まで関心を持たなかったことが疑問だった。
少なくとも、中学1年生のときは、同じクラスだったのだ。
もしかしたら、千秋ではなく、美紀を好きになっていたかもしれないのに。
遠矢は体育館に備え付けられている時計の針が練習の時間になったので、首にかけていた笛を吹いた。
この話は一旦忘れて、部活に意識を集中させなければ。
「遠矢先輩、高塚先輩と付き合ってるって本当ですか?」
と訊いてきた。
「ああ、そうだけど…」
遠矢が答えると、後輩たちは一斉に遠矢に質問攻めをしてきた。
「いつからですかっ?」
「どっちからですかっ?」
「小樽の水族館まで行ってきたって本当ですかっ?」
遠矢は「えーと…」とその勢いに圧倒されたが、コホンと咳をひとつついて、質問に答えた。
「付き合いだしたのは終業式の日で、まぁ言ってくれたのは向こうだけど…水族館は行った。まだそれだけだけど」
後輩たちは「おーっ!」という奇声を発した。目がキラキラ輝いている。
「遠矢先輩、めっちゃモテるのに誰とも付き合わないから、変だと思ったンすよ」
「いやぁ最後に驚かされましたよ!」
「でもなんか感動っす。相手があの高塚先輩なら、俺、納得です!」
「遠矢先輩は、ああいう感じのひとがいいんですねー」
「そうそう、千秋先輩っぽいですもんね!」
急に千秋の名前が出て、遠矢は、平然を装いながら後輩たちの話に入っていった。
「高塚って、千秋に似てる、かな」
遠矢も同じことを思った。そう思ったのは自分だけではないのかと、確かめたくなったのだ。
「似てますよ!話し方とか、仕草とか?千秋先輩、怒ったらおっかないときありますし、しっかりしてるから気が強い感じもしますけど、素振りって言うんですか?なんか雰囲気が可愛らしいから、結局、あのひとは可愛い!ってなるんですよ。それが高塚先輩にもあるかなぁって」
「あと、髪型とか、制服の着方とか?とにかくなんとなく似てますよ!特に、あの表情とか仕草とかっ!」
「そーそー。千秋先輩、あれが卑怯っすよね!めっちゃ可愛いの!」
「ってお前、結局千秋先輩の話かよ!」
「だって俺、千秋先輩狙おうと思ったのに、遠矢先輩いるから、諦めたんだぜ。それなのに!って思うじゃん」
「千秋先輩は、遠矢先輩がいてもいなくても、お前は選ばねぇよ」
「高嶺の花なんだからな!」
バスケ部内で、遠矢と千秋が隠れて付き合っているのではないか、という噂はあった。部員たちも、キャプテンとマネージャーの関係上我慢しているだけで、実は両思いなんじゃないかと勘ぐる者もいた。
遠矢はその噂を否定しつつ、そうなればいいなと、心の中では思っていた。
千秋だけがその噂を本気で否定していたが、その理由を知っている手前、遠矢は切なくなった。
しかし、それよりも。
「似てる、か…」
千秋と美紀を似ていると感じていたのは事実だが、後輩たちまでそう言うのであれば、相当似ていることになる。
最近まで美紀の存在を知っているかどうかすら怪しかった遠矢は、そこまで似ている美紀に今まで関心を持たなかったことが疑問だった。
少なくとも、中学1年生のときは、同じクラスだったのだ。
もしかしたら、千秋ではなく、美紀を好きになっていたかもしれないのに。
遠矢は体育館に備え付けられている時計の針が練習の時間になったので、首にかけていた笛を吹いた。
この話は一旦忘れて、部活に意識を集中させなければ。