Powder Snow
クリスマスを明日に控えた、終業式。全校生徒が体育館に集まった。3年生はこの日から自由登校になる。
遠矢は顧問の教師から休みの間、代わりに練習を見てくれと頼まれたので、変わらず学校には通うこととなっている。何もせず一日が終わるよりはマシかと、顧問の頼みを快諾した。
背の高い遠矢、啓一、浩輔は一番後ろに並んでいた。横に2列で並ぶところを、3列に広がって立っている。女子の中でも身長の低い千秋は、ずっと前の方にいた。
式の最中、コソコソと啓一が話しかけてきた。
「おふたりさん、今日、このあと、空いてる?」
「今日?」
「なんで?」
遠矢と浩輔は尋ねた。
啓一はいつもの笑顔を見せ、整えられた唇を持ち上げた。
「俺と、遠矢と浩輔と、千秋とでさ、どっか行かない?遠矢はもう結果出たし、千秋は結果待ちでしょ?浩輔は専門学校だしさ、なんとかなるっしょ。もうあんまり時間ないし、たまにはこのメンバーで遊びませんこと?」
「おい、専門っつったって、入試はあるんだぞ」
「浩輔なら大丈夫だって!ね、いいじゃん、一日くらい」
愛嬌のある笑顔を振りまく啓一に、遠矢と浩輔は困惑した。
チラリと浩輔を見ると、浩輔も遠矢に答えを求めていたようで、目があった。ふたりは数秒見つめあうと、息をついた。
「………言い出したら、きかないからな」
「ああ」
「やったぁ!んじゃ千秋にも言っとくね!」
啓一は子供のように喜んだ。それは『これで良かったのかもしれない』と、遠矢に思わせるほどだった。
中学1年生のときからの付き合いになるが、ここまでこの男に情が移っていることに驚いた。いつもニコニコして何かを隠しているようなこの友人に、今では何も言えない。
犬のようだと、遠矢は思った。
出会ったばかりの頃は、もっと刺々しかったのにと、遠矢の意識は過去へ巡った。
遠矢は顧問の教師から休みの間、代わりに練習を見てくれと頼まれたので、変わらず学校には通うこととなっている。何もせず一日が終わるよりはマシかと、顧問の頼みを快諾した。
背の高い遠矢、啓一、浩輔は一番後ろに並んでいた。横に2列で並ぶところを、3列に広がって立っている。女子の中でも身長の低い千秋は、ずっと前の方にいた。
式の最中、コソコソと啓一が話しかけてきた。
「おふたりさん、今日、このあと、空いてる?」
「今日?」
「なんで?」
遠矢と浩輔は尋ねた。
啓一はいつもの笑顔を見せ、整えられた唇を持ち上げた。
「俺と、遠矢と浩輔と、千秋とでさ、どっか行かない?遠矢はもう結果出たし、千秋は結果待ちでしょ?浩輔は専門学校だしさ、なんとかなるっしょ。もうあんまり時間ないし、たまにはこのメンバーで遊びませんこと?」
「おい、専門っつったって、入試はあるんだぞ」
「浩輔なら大丈夫だって!ね、いいじゃん、一日くらい」
愛嬌のある笑顔を振りまく啓一に、遠矢と浩輔は困惑した。
チラリと浩輔を見ると、浩輔も遠矢に答えを求めていたようで、目があった。ふたりは数秒見つめあうと、息をついた。
「………言い出したら、きかないからな」
「ああ」
「やったぁ!んじゃ千秋にも言っとくね!」
啓一は子供のように喜んだ。それは『これで良かったのかもしれない』と、遠矢に思わせるほどだった。
中学1年生のときからの付き合いになるが、ここまでこの男に情が移っていることに驚いた。いつもニコニコして何かを隠しているようなこの友人に、今では何も言えない。
犬のようだと、遠矢は思った。
出会ったばかりの頃は、もっと刺々しかったのにと、遠矢の意識は過去へ巡った。