君と。
小銭を受け取ろうと伸ばした手はさっきまでが嘘のように不自由なく動いた。




「ありがとう、ございます…」




「いーえ」





優しく微笑んでこの場を立ち去ろうとする彼。




その後ろ姿を見たらなぜかもう二度と会うことが出来ない気がして




心が苦しくなった。




初対面のはずなのに私は




「…あの!
もし突然、半年後に世界が終わるって言われたらどうしますか…?」




そんなことを口走って




「え、半年後…?
明日じゃなくて?」




振り返ってくれた彼を困らせた。





彼は少し悩んだ後に





「笑うかな…
自分の人生、案外あっけなかったなって」




彼の真っ黒な瞳がもう1度私をとらえると




なぜか私の目からは涙がこぼれた。




彼はすごく驚いた顔をしていたけど涙をこらえることなんて出来なくて




私はその場に崩れ落ちた。





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