ボクはキミの流星群
「グゥー」

そう音をたてたのは、わたしのお腹だった。

そういえば、まだ家に帰ってなくてご飯を食べていなかった。

きっとピロもお腹が空いているはず。


「行こっか」

わたしは立ち上がって、ピロの手を握った。その手は少し冷たくて、プニプニしていた。

ピロは首を傾げていたけど、わたしの隣に立ち上がって、素直に着いてきてくれた。

裏山を下ったところには、すでに街灯が眩しく夜道を照らしていた。

さっきまでいた裏山の方から、色んな虫の鳴き声が聞こえてくる。

「夏だな」

そう小さく呟いてみると、いつものようにピロが首を傾げた。

「ナツ……」

ピロは不思議そうに周りを見渡していた。

何がナツなのか、探そうとしているみたい。

「キャア!」

夏の夜に感動していると、脇にある小さな田んぼから一匹のカエルが飛び跳ねてきたのだ。

だけどわたしが驚いたのはそこじゃなかった。

そのカエルに対して驚いているピロに、わたしは思わず驚いてしまった。

ピロは甲高い、女の子がゴキブリを見た時みたいな声で叫んだんだ。

やっぱりピロって女の子?

「ぷっ」

怖がるピロとは正反対に、わたしは思わず笑ってしまった。

「カエルだよ。そんなに驚かなくても大丈夫」

そう言ってケラケラ笑っていると、ピロはわたしの手をギュッと力強く握って、訴えるような目で見つめてきた。

「うん、ごめんね。じゃあ行こうか」

不安にさせてしまったみたいで、ブルブルと震えるピロ。早く安心させてあげなきゃ。

「バカ」
「は?」

ピロは小さくそう呟いて、下を俯いた。

は?バカ?なんだとー!?

今すぐ怒ってやりたかったけど、それは堪えておいた。宇宙人と喧嘩なんて経験ないし。

またそんな変な言葉をどこで……

「バーカ。セイヤノバーカ」
「バーカ。ピロのバーカ」

言い出すと止まらなくて、お互いにずっと言い合いを続けた。

バーカバーカって何度も言い合って、最後には笑いあって。なんだかピロと一緒にいると、不思議な気持ちになる。

なんだろう……今まで感じられなかった何かがある。胸の中が少し温かくなっていく感じ。なんだろう……

「ピロ、バカヤダヨ」

ピロは少しムッとした顔でそう言った。

ピロの言葉にはイントネーションがなく不自然で、ちょっと面白い。

それもきっといつか自然になっていくんだろうけど。
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