ボクはキミの流星群
「着いたよ」

家に着いたはいいものの、これからピロをどうしたらいいのかわからなかった。

家の中に入れるのは、おばあちゃんがいるからとても困難だ。

おばあちゃんにバレたら、きっとすぐに警察を呼ばれてしまう。

「ピロ」

いいことを思いついたわたしは、人差し指でピロの肌をつついて、大きく丸のポーズをしてみせた。

すると、ピロは少し戸惑いながらも、肌の色を透明に変えた。

ピロの肌の色は自由自在に変わるらしい。それを利用して、ピロの姿が見えないように透明にしてもらった。もちろん臓器もね。

そして透明なピロの手を引っ張りながら、ゆっくりと扉を開けて家に入った。

「星夜」

玄関にはすでにおばあちゃんが立っていて、怒っているような顔をしていた。

おばあちゃんは怒ってもあまり怖くないけど。

「ごめんなさい。今日は部活に行ってて、直接山まで行っちゃって。次から気をつけます」
「まったく」

おばあちゃんは呆れたようにため息をついて、リビングまで行ってしまった。

わたしは、玄関の端にピロを座らせ、「ここにいて」とジェスチャーで伝えた。

まるで犬に"待て"をさせているみたい。

わたしもおばあちゃんに続いてリビングに向かった。

今日は少し疲れたのか、自然と大きなあくびが出てくる。

伸びをしながら椅子に腰掛けると、おばあちゃんがご機嫌そうに寄ってきた。

「今日はビーフシチューよ」

おばあちゃんには、さっきの呆れ顔などどこにも見当たらなく、嬉しそうな笑顔だけが浮かんでいた。

「なんでビーフシチュー?」

おばあちゃんがビーフシチューを作るなんて、クイズ番組の景品で、大量の牛肉を貰ってしまって仕方なく作ってみた時以来。

「お隣の佐々木さんからいただいたの。牛肉をくださるなんて、ものすごくいい人よね」

お隣の佐々木さんと言えば、とても陽気で笑顔の絶えない優しいおばさんというイメージ。いつも何かあれば気にかけてくれるし、色んなものを譲ってくださる。

「でも、ニンジンとジャガイモは、スーパーで買ったの。まぁそこは許してよ」

おばあちゃんはふにゃっと笑って、わたしの目の前の椅子に座った。

このビーフシチュー、ピロにあげたいな。

「おばあちゃん。今日は疲れたでしょ?後はわたしがするから、おばあちゃん先に寝てていいよ」
「え、本当?じゃあお言葉に甘えて」

おばあちゃんの部屋は二階で、わたしの部屋も二階。だけど部屋は別々。

もちろんおばあちゃんのことを思ってだけど、本当はピロと食べたいからっていうのもある。そんなこと言えないけどね。
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