ボクはキミの流星群
電車を降りていつもの道を歩いていると、わたしの中でまた疑問が生まれた。

ピロはどうやってあそこまで行ったのかな。

電車はお金が無いから絶対使えないだろうし、徒歩だとしたらあんなに遠くまで行かないはず。

今のピロはというと、池を游ぐ鯉や亀を不思議そうに観察しているところだった。

「ねぇピロ」

そう呼びかけるとすぐに返事をしてくれる。

「どうやってあそこまで行ったの?」

ピロはその言葉に少し困惑しながらも、最終的には理解してくれた。

「デンシャ」
「電車!?お金は!?」

ありえないと思っていた返答に、思わず大声が漏れた。

まさか、わたしのお金盗んでたりしてないでしょうね……

「ピロ、トウメイ、ナッタ」

ピロは透明になって電車に乗り込んだと!?立派な犯罪じゃないか!

「それはダメよ。いい?これからはわたしと一緒に行こうね」

優しく手を握ると、珍しく『ヤダ』を発さずに嬉しそうに頷いた。

雑貨屋でカップルでも見たのだろうか。

また足を進めると、いつもの猫がわたしたちに擦り寄ってきた。

もちろんピロは驚いていて、わたしの体にガッシリとつかまっていた。これは抱きしめているとも言うのかな。いや、それとは違うか。

「ナニコレ」

ピロは震える声で猫を指さした。

相変わらず猫は、わたしの足に体を擦り付けている。

━━ニャア

猫が甘えた鳴き声を出すだけでも、ピロは怯えていた。

「猫だよ」
「ネコ?」

すると猫はピロの足元に寄り、スリスリと顔を擦り付けたのだ。

「ピロ、ネコヤダ!」

出ました。お決まりの『ヤダ』。

こういう時だけは子供になっちゃうんだよね。

「ごめんねー、じゅうぶんに構ってあげられなくて。また明日会えるからね」

また明日会えるとは、普通はありえないんだけどね。わたしは"特別補習"を受けなきゃならないから。

それに関しては別に問題ないけど。

そして、ギュッとピロの手を握りなおして道を真っ直ぐ進む。

スタスタと足を進めると見えてくる、赤い屋根の家。

その家を左に曲がると、わたしの家が姿を現す。

ピロはワクワクした様子でわたしの家を指さした。

「セイヤ、イエ」

どうやら『星夜の家』とか、『ピロは透明になった』みたいに、上手く言葉を繋がることはまだできないらしい。

でもかなりの単語を覚えたよね。それでもすごいと思うよ。

「オバアチャン……」
「あ」

わたしが鍵を開けている最中に、ピロがそう呟いた。

そういえば、おばあちゃん大丈夫かな……

少し不安に思いながら、わたしは扉を開けた。
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