ボクはキミの流星群
片手にコップを持って部屋に入ると一番に、幸せそうにキャンディーを舐めているピロの姿が見えた。

「美味しい?」
「オイシイ」

ピロはニコッと笑ってそう答えると、ベーっとカラフルに染まった舌を見せてきた。

今朝渡したニンジンは完食したらしく、少しだけお腹が膨れているようにも見えた。

ピロには少し太ってもらいたかったし、ガリガリよりはちょうどよかった。

手に持っていたコップを勉強机の上に置いてみると、ピロは不思議そうにそれを見つめていた。

「ニンジンジュースだよ。ピロが飲んでいいからね」
「ヤッタァ!」

ピロは嬉しそうにコップに手をつけた。

わたしも袋からキャンディーを取り出して、思いっきりベッドにダイブした。

「はぁー」

ため息をつくと幸せが逃げる、と誰かから聞いたことがある。

でもため息をついてる時って、すでに幸せが逃げている時じゃないのか?幸せが逃げたからため息をつくんじゃないか?

わたしはずっとそう思い続けてきたため、お構い無しにため息をついていた。

「ピロのお父さんとお母さんって、どんなひと?」
「……?」

わかるわけないか。まだわからないよね。

だって地球に来てまだ一日しか経ってないもんね。

ピロはいきなりひとりぼっちになっても平気なのかな。親が恋しくならないのかな。

ピロはたまにわがままを言うけれど、親に関してのことは一切言わない。

もしかしてお父さんとお母さんのこと、認知してないのかな……

「えらいね、ピロは」

わたしがそう言うと、ピロはこてんと首を傾げて笑った。

きっと意味はわかってないんだろうけど、いいことだっていうのはわかるんだろうな。

わたしよりもピロの方がずっとえらいのかもね。
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