ボクはキミの流星群
「俺とお前は、幼なじみなんだ」
「どういうこと……」

──ピンポーン

話が始まったところで、インターホンが鳴った。

わたしは、菊池から出たよくわからない言葉に困惑を隠せなかった。

「なんだよ」

菊池はため息をつきながらモニターを確認しに行った。

こんなタイミングに……いったい誰が。

「母さん?なんで?」

菊池はモニターの前で驚いた顔をしていた。

お母さん?お母さんは仕事に行ったんじゃなかったっけ?

すると、ガチャと開いた扉から一人の女性が現れた。

その人はスーツとかではなく、少しラフな格好をしていて、とても優しそうな人に見える。

「あら、彼女さん?」

その女性はわたしを見て、優しく微笑んだ。

この人が菊池のお母さんかな?

「彼女じゃねぇよ!コイツは……」

玄関にいるお母さんらしき人は高笑いしていたけど、菊池は不機嫌そうな表情を浮かべていた。

「母さん。コイツは、松乃星夜さんだ」
「え……あの星夜ちゃん?」

お母さんの表情が一瞬で変わり、頬が急に固まったみたいに口角が下がった。

どういうこと?お母さんはわたしのこと知ってるの?

この三人の関係を理解していないのはわたしだけみたいで、二人ともすでにわたしを知っていたみたいな、そんな感じがする。

「星夜ちゃん……生きてたのね」
「はい?」

思わず変な声が出た。いやそりゃあ出るよね。

生きてたのね、とか言われたらそりゃあ驚くよね。

わたしは死んでいたの?死んでる設定だったの?

「それが、コイツは何も覚えてないらしいんだ。だからはじめから話してあげようと思ってたところ」

目の前にいる菊池は、さっきまでの菊池と違う。なぜかわたしの知らない人へと変わっている。

「ちょうどいいわ。今日の仕事は任せてきたから」

そう言ってお母さんは玄関にバッグを置いて、キッチンへ移動してからみんなに座るように指示した。

わたしは慣れないフワフワの椅子に腰掛けた。

「あの災害のことは、全く覚えてないの?」

お母さんはキッチンから悲しげな表情で、わたしに問いかけてきた。

「全く覚えてないんです。家族のこともよくわかりませんし、本当に記憶に残ってないんです」

誰かと誰かのことを思って星空を眺めたことだけは、しっかりと記憶に残っているけど。

「そうなんだ……家族のこともなのね」

今までおばあちゃんに追究してきたけど、全て上手くかわされた。

今日が本当のことを知る日なんだ。

そう思っていると、胸が痛いくらいに騒ぎ始めた。
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