ボクはキミの流星群
住所はわたしから教えて、そこまでナビに従って送ってもらった。
辿り着いた場所は十四年間住み続けたあの家で、特にいつもと変わりのない様子だった。
「行ってらっしゃい」
わたしが車のドアを開けると、お父さんはそれだけ言って見送ってくれた。
わたしは何も言わずに頷いてから、体を家に向き直した。
今からあの人と再会するのか……
なんだか複雑な気持ちで、顔を合わせるのが怖かった。
「あら、星夜ちゃん!?」
ドアノブに手をかけた時、すぐそばから聞き覚えのある声がした。
「佐々木さん!」
その声は、いつもお世話になっていたお隣の佐々木さんの声だった。
佐々木さんは心配そうな目でわたしを見つめてきた。わたしが戻って来たことに驚いているのかな。
「突然だけど、あなたのおばあちゃんの名前って知ってる?」
「……知りません」
そういえば一度も聞いたことがなかった。
下の名前が"佳代子"だってことは知っていて、自分の名前が松乃星夜だから、松乃佳代子だと考えていた。
だけど、直接本人からは聞いたことがない。
佐々木さんはわたしの隣にやって来て、バッグの中から何かを探り始めた。
「これを見て」
渡されたのは一枚の紙で、それは名刺と呼ばれるものだった。
そこに書かれた名前は
『中野佳代子』。
「これはわたしがここに引越して来た時にもらった名刺なの。表札も"中野"だったのに、星夜ちゃんが来てから全部"松乃"に変わったの」
わたしは驚きのあまり声も出なかった。
佐々木さんはそんなわたしに対して、続けて語り始める。
「戸籍をどうしてるのかまでは知らない。けど、あの人は完全なる犯罪者なの。だからここからは離れた方がいいわ」
犯罪者……
わたしはそれを知らずにずっと一緒に生きてきたのか。
そんな立派な犯罪をしている老人と家族の設定だったという真実に、思わずゾッとした。
「わたしは本当の家族を見つけたんです。だからもうここに戻って来るようなことはありません。今まで本当にお世話になりました」
わたしは佐々木さんに深くお辞儀をしてから、まだツヤツヤのドアノブに手をかけた。
辿り着いた場所は十四年間住み続けたあの家で、特にいつもと変わりのない様子だった。
「行ってらっしゃい」
わたしが車のドアを開けると、お父さんはそれだけ言って見送ってくれた。
わたしは何も言わずに頷いてから、体を家に向き直した。
今からあの人と再会するのか……
なんだか複雑な気持ちで、顔を合わせるのが怖かった。
「あら、星夜ちゃん!?」
ドアノブに手をかけた時、すぐそばから聞き覚えのある声がした。
「佐々木さん!」
その声は、いつもお世話になっていたお隣の佐々木さんの声だった。
佐々木さんは心配そうな目でわたしを見つめてきた。わたしが戻って来たことに驚いているのかな。
「突然だけど、あなたのおばあちゃんの名前って知ってる?」
「……知りません」
そういえば一度も聞いたことがなかった。
下の名前が"佳代子"だってことは知っていて、自分の名前が松乃星夜だから、松乃佳代子だと考えていた。
だけど、直接本人からは聞いたことがない。
佐々木さんはわたしの隣にやって来て、バッグの中から何かを探り始めた。
「これを見て」
渡されたのは一枚の紙で、それは名刺と呼ばれるものだった。
そこに書かれた名前は
『中野佳代子』。
「これはわたしがここに引越して来た時にもらった名刺なの。表札も"中野"だったのに、星夜ちゃんが来てから全部"松乃"に変わったの」
わたしは驚きのあまり声も出なかった。
佐々木さんはそんなわたしに対して、続けて語り始める。
「戸籍をどうしてるのかまでは知らない。けど、あの人は完全なる犯罪者なの。だからここからは離れた方がいいわ」
犯罪者……
わたしはそれを知らずにずっと一緒に生きてきたのか。
そんな立派な犯罪をしている老人と家族の設定だったという真実に、思わずゾッとした。
「わたしは本当の家族を見つけたんです。だからもうここに戻って来るようなことはありません。今まで本当にお世話になりました」
わたしは佐々木さんに深くお辞儀をしてから、まだツヤツヤのドアノブに手をかけた。