ボクはキミの流星群
わたしは部屋の前で立ち止まり、一度深呼吸をした。

ピロに忘れられてないかなとか、嫌われてないかなとか、急に不安な気持ちが湧き上がってきたからだ。

ドキドキしながらもそっとドアを開けてみると、少し光の差し込んだ部屋の隅に毛布にくるまったピロが居座っていた。

「ピロ!」
「セイヤ!」

わたしは嬉しくって思いきりピロに飛びついた。

何も言わずに家を出てしまい、ご飯もあげずにひとりぼっちにさせてしまったというのに、ずっと同じ場所に座って待っててくれたなんて……優しすぎるよ。

「どうして……どうしてここにいてくれたの?」

理由はないのかもしれない。

だけど待っててくれたという事実だけは確かだから、何か思いはあったのかもしれない。

「ダッテ、セイヤ、マッテテ、イッタカラ」

びっくりした。

以前よりもたくさん言葉を覚えていたからだ。

この部屋にいながらどうやって勉強したのか……

わたしは抱きしめていた体を離して、ピロの目を見つめた。

相変わらず綺麗な顔立ちで、本当に人間みたいなのに中身は可愛らしい宇宙人。

そんなピロはとても愛らしかった。

「本当にいい子だね」

わたしはピロをもう一度抱きしめた。

するとピロは戸惑いながらわたしの背中に手を置いた。

なんか可愛いな……

「コレナニ?」

そういえば久しぶりに聞いたな、『コレナニ』。

"コレ"とはどれのことを指しているのか……

一瞬悩んだけれど、わたしの背中をぐるぐるしてる手でこの状態のことを言ってるんだとわかった。

「ハグ」
「ハグ?」
「そう。大好きな人とか、大切な人とかをギュってするんだよ」
「ダイスキナヒト?タイセツナヒト?ギュット?」

ピロは首を傾げながら言葉を繰り返した。

その時やっとわたしは自分の言動の意味に気がついて、ピロの体を離した。

わたしにとってピロは、大好きな人?大切な人?

どっちもなのかな?

それってどういうこと……?

こんなにも胸が熱くなっていくのは、どうしてなのだろう。

複雑な気持ちがわたしの心の中を満たしていった。

「あと、どうやって言葉を覚えたの?」

不自然だった。

外には出ていないはずなのにどうして言葉を覚えたのか。

「コレ」

ピロが差し出したのは、テレビのリモコンだった。

「うそ!テレビで覚えたの!?」

これまたびっくり。

リモコンの扱い方とかテレビのチャンネルのこととか一切話してないのに!

やっぱりピロは天才なんだな、と思うとわたしも鼻が高い気がしてきた。

子育てってこんな感じなのかな?こんなに楽しいものなのかな?

わたしはピロと一緒に成長していきたいなと、そう心から思った。
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