ボクはキミの流星群
やっと荷物を全て整え終え、わたしはリビングの目の前で深呼吸をしている。

「宇宙人と仲良くなったら一緒に住みたい」なんて言ってもきっと信じてくれないだろうし、バカバカしいと思われてしまうに違いない。

けれどお父さんとお母さんはわたしを信じてくれたんだ。

いつまでもわたしを待ち続けてくれて、帰ってくるまでずっと信じてくれていた。

もしここでわたしがピロのことを秘密にしていたら、きっと後から悲しまれてしまう。

もうこれ以上迷惑はかけたくないし、悲しませたくない。だから言わなきゃならないんだ。

そう決意を固めてからリビングに足を踏み入れた。

「何このいい匂い!」

リビングに入った途端、鼻翼をくすぐるような匂いがわたしを包み込んだ。

「よかった!星夜が戻ってくるまで何年間も研究したんだからね!」

エプロンを身にまとったお母さんが嬉しそうに笑った。

椅子にはすでにお父さんが座っていて、お母さんと一緒に笑みを浮かべていた。

なんだか急に胸が温かくなってきてまた、これが家族なんだなって思わされる。

「それで、お昼ご飯って?」

あんなにいい匂いのする食べ物は一度も食べたことがない気がして、ワクワクしてきた。

「見てごらん!」

お母さんはわたしの手を引き、テーブルの上を指さした。

「すごい……」

テーブルの上には大きなホットプレートが置かれていて、その上には焼きたてのホットケーキが並べられていた。

実はわたしはホットケーキやパンケーキなどのケーキは食べたことがなかった。

前の家では外出をすることをあまり許されず、わたしが家を出る時は学校へ行く時と星を見に行く時くらいだったんだ。

だから一緒に外食に行ったり、買い物に行ったりなんて一度もなかったと言っても過言ではない。

わたしはすぐさま椅子に座り、大げさに手を合わせた。

「いただきます!」

大きなホットケーキをお皿に移して、上にバターとシロップをたくさん乗せた。

「本当に嬉しそうだな」
「だって初めてだもん!」

もごもごと口を動かすお父さんは、微笑みながらわたしの様子をしっかりと見ていた。

本当はピロの話をする時にドキドキするはずなのに、なぜか今ドキドキしてしまう。でも無駄ではないんだよね。

そして、緊張しながらも一口食べてみた。

「美味しい!!」

わたしは思わず声を張り上げた。たぶん近所まで届いてると思う。

今のわたしはピロがニンジンを食べた時みたい。

お母さんはクスクスと笑って、よかったと喜びの表情をみせていた。

「実は……お父さんとお母さんに話さなきゃいけないことがあるの」

目の前のホットケーキに乗ったバターとシロップは溶け込んでいっていた。

わたしが話し終える頃には全て溶けちゃうのかな。

「どうかしたの?」

お母さんは心配そうに聞いてきた。けれどお父さんは少し緊張気味な表情をしていて、どうやら嫌な話だと予想したようだ。

「信じてもらえるかわからないけど……」

どんどん速くなっていくわたしの鼓動は、リビング中に響き渡っていた。
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