ボクはキミの流星群
──キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴ると、みんな教室から出ていった。もちろんわたしも一緒に。

今から放課後で、みんなが部活に専念する時間。あまり目立たないけど、わたしも部活に入っている。

その部活は『天体観測部』。

なんと部員はたったの二人で、することはただ星空を観察すること。

わたしは裏山で星空を観察するため、あまり部活には参加しない。

だから、わたしは部員ではないと言ってもおかしくはない。でも決して退部することはなかった。

久しぶりに行ってみようかな、と気まぐれに部室である理科室を訪れた。

──ガチャ

少し重たいドアを押すと、中に誰かいるのが確認できた。

その人はすぐにこちらを振り向いて、驚いた顔をしていた。

「松乃じゃん!久しぶりだな」
「うん。菊池は毎日部活来てんの?」

黒色のサラサラの髪の毛に、綺麗な目。まぁまぁイケてるコイツは、菊池夜斗。

"ナイト"という名前通り、わたしと同様でなかなかの星空オタクだった。

「俺は毎日来てるよ。最近は空を通り越して、宇宙の方にも興味があってね」

菊池はふふと笑って、窓の外を眺めた。

まだ空は明るくて、太陽がギラギラと輝いている。

この太陽の光は……

「八分」

菊池は右手で太陽を遮りながら言った。

「太陽の光が地球に届くまで、八分かかるんだって。意外と長いんだよね」

そう言うと右手を下ろして、わたしの方を向いた。

「でももっと長い星あるよね」
「うん。何億光年かかる星もたくさんあるからね」

何億光年……わたしが生まれたずっとまえ。

そんな時代の星の光が、今やっと届くのか。

もうその星は存在していないのかもしれない。そう考えると、あまり深く考えたくない宇宙も、面白いなと思えてきた。

「宇宙って面白いだろ」

菊池はふにゃりと笑った。

「お前は、宇宙人とか信じる?」
「う、宇宙人……」

その言葉に思わずドキッとしてしまった。

「俺は信じてる」
「え……」

なぜか菊池は真剣な顔で話していて、それがまたわたしを焦らす。

もしかして、ピロのこと知ってるんじゃないかって。

「だってあんなに広い宇宙だよ?そりゃあいるに決まってるよ。逆にいなかったら怖いから」

その言葉を聞いて、わたしはふっと胸をなでおろした。

よかった。バレてない。

ピロのことが世界中にばれてしまえば、きっとピロの命が危ないことになってしまう。

だから、絶対に言ってはいけないんだ。

「どうかした?」
「あ、いや、そうだなって思って」

不思議そうな目で見つめてくる菊池に、わたしは下手くそな笑顔で返した。

「あ、あともう帰らなきゃ。じゃあね」
「え、ちょっと」

止められそうになったけど、無理矢理理科室を飛び出した。

さっきまで明るかった太陽は、少しオレンジ色に輝いていた。
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