PLAYTHING!!
「……良かったじゃない。別れられて」



いつもと何一つ変わらない冷静な香乃子の顔。




言われた言葉で、わたしは思わず動けなくなる……。




「ちょっと香乃子!! なんでっ」


「だって、朱羽の本命は村田くんでしょ? だったら……別れられて良かったじゃない」



窺うようにわたしを見つめる香乃子。



香乃子の言うとおり。



わたしは村田くんが好きで、



理緒くんには無理矢理……付き合わされてただけ。



……そのはずだった。



「……なんで泣いてるの?」


「……」



試すような香乃子の口調に、わたしは答えを出せずに口ごもる。



「なんで……そのピン、つけてるの?」



香乃子が指差したところにゆっくり触れてみる。



そこにあるのはもちろん、蝶のヘアピン。



紛れもなく今朝、わたしがつけたピンだ……。



「だって……嬉し……かったから」



喉が詰まって上手く喋れない。



「理緒くんが……くれたん……だもん」



でも、言葉はいつになく素直に口から飛び出してくる。



「……好き、なの?」



香乃子に答えるように、わたしはゆっくりと頷いた。
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