moon~満ちる日舞う少女~【中】
千「芝田君はクラスでは特に元気のいい人で、そんな彼をみんな慕っていました。…反対に佐倉君にはあまりよりたがらなかったんです」
美「よりたがらなかった?」
千「……多分、佐倉君は相当な人見知り何じゃないかなって思います」
そういいながら千代ちゃんはクスッと笑った。
千「だからか、佐倉君は端っこで携帯をいじったりする感じで、あまり人を寄せ付けない雰囲気だったんです」
…不良ならではの、オーラってやつも関係してるんだろうな。
千「私も初めは怖いと思っていたんですけど、日直が同じになって優しい人だって気づきました。…そのころから芝田君は佐倉君に話しかけるようになったんです。…初めは佐倉君も戸惑ってたんですけど、段々と慣れてきて…私ともたくさん話をしてくれるようになりました」
千代ちゃんはすごく素敵な笑みを浮かべた。…多分、慶のことが好きなんだろうな。
私の仲間ではないけど、姫として、仲良くしてくれた慶を好いてくれるのは普通に嬉しい。
千「だけど、ある日芝田君は佐倉君を無視するようになりました」
美「急に?」
千「はい…。…初めは無視をするなどで留まっていたんですけど、それがエスカレートしていって、クラスの男子からは殴られたり蹴られたりしていたんだと思います」
美「と思うってのは、見てないの?」
千「…佐倉君は芝田君たちに呼び出されたあと、いつも顔や体に傷をつけて教室に戻ってきます…。…それで私はそんな佐倉君を見ていられなくて、芝田君にやめるようにいったんです」