moon~満ちる日舞う少女~【中】
ーシュッー
…え…?
ードカッー
美「ーっ」
世「美月っ」
美「手を出すな!!…世羅は、負傷者を…頼む」
世「…わかった。」
総「いいのか?ひとりで。」
美「勘違いするな」
総「あ?」
美「お前じゃ私に勝てない」
総「…確かに、今までは勝てなかったかもしれないけど…」
美「私とお前の間に、"今まで"なんてあったか」
「……」
総…いや、そいつは少しニヤッと笑ったあと私を見る。
「よく分かったな」
美「……お前は誰だ」
外見も、声も似てる。総だって言われれば誰も疑わないかもしれない。だけど、何十回も何百回も拳を交えた私には分かる。…こいつは総じゃない。
辰「…辰(タツ)…。一之瀬辰だ。」
美「一之瀬…」
辰「なんで宮野じゃないのか、そう思っただろ?」
見透かされてたか。
辰「僕は、絶縁状態だからな」
美「絶縁状態…?」
辰「僕は自由に行きたいんだ!親にも、兄弟にも、縛られずっ!楽しく自由に遊びたいんだ!」
両手を広げて話す辰は、少し狂ってる気がした。
美「じゃあ、これも…」
辰「遊びだ。…総が大切にしてきた、来龍と言うものを壊したかったんだ。この姿でなっ!」
美「総の姿でやれば、みんな総を疑うからか…」
辰「そうだ。総は来龍を大切に思ってたらしいから、その分多く傷つく」
美「…兄弟ならなんでそんなことを」
辰「兄弟?言っただろ、絶縁してるんだ。あいつは弟なんかじゃない」
…辰が兄で、総が弟だったんだな。…
美「絶縁してるって言う割には、自分から総に関わってんじゃねぇか」
辰「別にそれは弟だからという理由なんかじゃない。…これはゲームだ!壊して、壊して壊して、誰かが苦しみで歪む顔がみたい!!あははっ!!」
美「…狂ってる…」
辰「そうかもな、でも、楽しくてしょうがない」
守るものがないってのは、案外無敵なのかもしれねぇ。…でも、それが強いってわけじゃない。私はそう思ってる。だから私は負けない。
辰「おっと、動くなよ」
美「動くなと言われて動かねぇバカはいない」
辰「爆弾がしかけてあるといってもか?」
美「ー?!」