もう泣いてもいいよね
第1章 プロローグ
明るい陽射しの中、公園のそばを通りかかった時、目の前を赤いボールがてーんてーんと転がっていった。

私はそのボールの規則的な跳ね方に目を奪われた。

ボールは少しずつ跳ね方を小さくしながら道路へと跳ねていった。

何となく淡いパステルカラーのイメージの中、その赤色はくっきりと見えた。

ぼーっとそのボールを追いかける私の視界の中に、小さな女の子が入ってきた。


「え?」


その子は慌てた顔でボールを追いかけている。

「危ない!」

私はその子を追いかけながら道路の先を見た。

ダンプが来ている。

「なんで!!」


女の子を見ると、既に道路にいた。

そして、驚いた顔でダンプを見つめたまま固まっている。


赤いボールは反対側の歩道に転がっていった。



私はスローモーションになった思考の中で、はっきりとダンプの運転手を見た。

携帯をいじっていて前を見ていない。

私は道路に飛び出し、女の子を突き飛ばした。


私にできることは、そこまでだった。


道路で全身を打ち、気が遠くなりながら横を見ると、視界一杯にダンプがあった。

運転手はまだ携帯をいじっている。


「もうだめだ…」


もうろうとした意識の中、目をつぶった時、誰かが私をかばうように抱きしめた様な感じを受けた。


小さな身体だ。


私は女の子の方を見た。

彼女は転んだままこっちを見ていた。

私のそばには誰もいない。

それでも誰かが私をかばっている。


「だれ?」



その瞬間、ダンプが私を壊した。
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