もう泣いてもいいよね
「え?」



自分の手が光っている。



そして、身体中が光り始めていた。



「なに?これ?」


母さんは涙を浮かべたままにっこりと微笑んでいた。

「大丈夫。心配しなくていいの」

母さんはそう言った。



「香澄!」

振り返ると香澄も微笑んでいた。



「香澄、子守花をくれ」


「うん」


香澄は、躊躇したが、手に持っていた子守花をタケルに渡した。



タケルも身体が光り始めた。



「タケル!」

私はタケルに手を伸ばした。

タケルはその手をしっかり掴んでくれた。






「私…死んでたの?」





タケルは何も言わすに微笑んだ。




その瞬間、全てがわかった。



私が、ダンプにはねられた時、私をかばおうとしたのはタケルだった…




私が霊になったから、タケルが見えた。





そうだったんだ…





タケルは、本当に最後まで、私を守ってくれていたんだね。



香澄も、本当に最後まで、私たちを見守ってくれていたんだね。




私はすごく暖かい気持ちに包まれて、今さら、その真実に驚かなかった。




「香澄、ありがとう!」

私はどんどん強くなる光の中で叫んだ。

香澄は口元を震わせながらも微笑んで、手を振っていた。


「香澄、ありがとな!」

タケルも同じように光の中で叫んでいた。



そして、あの頃の姿に戻ったタケルは私に言った。

「さあ、一緒に行こう」


「うん」



香澄は叫びたい言葉があったが、心にしまい込んだ。



光がもっと強くなり、皆美とタケルの姿が見えなくなった。


そして、その光が塵のように拡散しながら淡く消えていった。


後には子守花だけが残っていた。





深雪は手に子守花を持ったまま泣き崩れた。

香澄はそれを支えながら、溢れそうな涙に耐えた。

そして、さっきまで皆美とタケルがいた空間を、ただ見つめた。


その耳に聞こえるのは、深雪の嗚咽だけだった…
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