もう泣いてもいいよね
深雪には、タケルから聞いたことを伝えた。

深雪はなるべく早く成仏させて欲しいと香澄に頼んだ。

香澄は、自分にとってはタケルと皆美が傍にいるのと同じだから、本当は二人がそのままでも構わないと思う気持ちと、それは間違っていると思う気持ちの間で揺れていた。

確かにその時は、タケルがいつまでも皆美の傍にいられると思っていた自分がいたのだ。

でも、深雪の気持ちを考えると、そんな気持ちはあってはならなかった。

香澄は成仏させるように何とかやってみると、深雪に伝えた。

そして、皆美がまだ「住んでいる」以上、皆美の部屋をそのままにしておいてもらうことを頼んだ。

部屋を借りるのは香澄が引き継いだ。
 


初めは、皆美が成仏できないのは、物語を書きたいためだと思っていたが、結局、違っていた。

皆美が、実家へ帰れないと強情だったことに、やっと気付いたのだった。

帰りたくても帰れなくて、母親に会えないのが心残りだったけど、それを認められないことが理由だった。



最後の時は賭だった。

もし違っていたら…

タケルが「想い」を残したまま成仏するかもしれないし、もしかしたら、成仏さえできなくなるかもしれなかった。

友達だからこそ、それがわかったと思いたかった。



香澄は、「子守花物語」をケータイ小説として公開することにした。

そっちの方が、読んでくれる読者は多い。

きっと皆美も喜んでくれるだろう。



香澄は、自分の部屋に戻ると、守神山で撮ったケータイの写真を見た。


1枚目は子守花が写っている。

2枚目も子守花だけが写っている。

二人が撮ってくれたはずの3枚目と4枚目は無い。



それを見ると、画面に涙が落ちた。



13年間我慢したけど、もう、我慢しなくていい。
 
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