もう泣いてもいいよね
部屋に戻ると、私はタケルに、あらためてお礼を言った。

「今日は、本当にありがとう」

「何が?」

タケルはきょとんとしている。

鈍いのは相変わらずだ。

「来てくれたこと。香澄に会わせてくれたこと」

「ああ…」

タケルは今思いついたかのように、なるほどという顔をしていた。



タケルの優しさは昔から自然だった。

だから、さっきみたいな雰囲気になる。

タケルが優しいのは、じっちゃんに「オトコはうんぬん」と言われたからじゃないと、私は思っている。

いつも本気で私のことを心配していたのを覚えている。

あのあごのケガの時もそうだった。
 
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