もう泣いてもいいよね
「それより、書きたい話って構想はあるの?」

「うん。あの子守花をモチーフにしたファンタジーものを書きたいの」

「子守花…」

タケルと香澄が顔を見合わせた。

「あの花の伝説について、さらにうちの村だけだったのか、他の地方でもあったのか少し調べてから書いてみたいの」

「そう…」

香澄が少し感情を隠した感じで言った。

「なに?」

「ううん。あの花のことなら、うちのばっちゃんに聞けば何かわかるかも」



香澄の言うばっちゃん…

森川綾女。

現在の森川家の当主でお子守様を祭る巫女だ。

森川家以外の私たちは「綾女様」と呼ぶ。

香澄の祖母で、多分70は過ぎているはず。

でも、見た目は40代でも通るほど若く見える。


香澄のお母さんで、実の娘である楓(かえで)おばちゃんと並んでると、まるで姉妹のように見える。

村では、お子守様の力だと思っている。

伝え聞いた話では、森川家の女性で代々巫女になった者は、その時点で年を取るのがまるで止まったように見えるという。

私が知っている巫女は綾女様だけだけど、その話を信じざるを得ない。


こんこんと湧く清水の泉の前にある森川家の祠には、お子守様が祭られているが、子守花はその名前からもお子守様の霊力が宿ると言われている。

そんなことから、子守花による蘇りの伝説も生まれたのかもしれない。


確かに、綾女様に聞けば子守花の伝説のことも知っているかもしれない。
 
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