もう泣いてもいいよね
その夜は、お客用の布団にタケルを寝かせて、ベッドに香澄と一緒に寝た。


誰かと一緒に寝るなんて何年振りだろう。

親と一緒に寝ていたのは小学校に上がるまでだった。

それに、私は今まで誰かと付き合ったことがない。

だから、誰かと一夜を共にしたことはないのだ。



香澄はほのかに暖かかった。

人とくっついて寝るのがこんなに気持ちいいなんてすっかり忘れていた。

子供のように抱きついている私を見て、香澄がくすっと笑った。

「ごめん。寝にくいよね?」

「いいよ。気にしないで」

「ありがと」

「うん」


気が付くと、タケルは既に寝息を立てているようだ。

今日はきっと疲れたよね。

私のためにいろいろと気を使ってくれたんだろう。



ふと、気付いた。


香澄に会いに行った時、タケルと香澄は久しぶりという感じじゃなかった。

それに、タケルは私のことを知っていて会いに来なかった。

それらのことが、私の心に一つの想像をさせた。


でも、タケルは今でもあんなに私のことを心配してくれてる…


二つの相反することが、頭の中で結びつかなかった。


香澄も横で寝息を立て始めた。

そして、私も意識が薄れていった。
 
< 33 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop