もう泣いてもいいよね
香澄は気を取り直して、皆美のマンションに向かった。


1階のホールに入った時、見た顔の女性が、いつもは誰もいない管理人室から出てきた。

「あ、大家さん」

「あら、森川さん」

香澄はぺこりと頭を下げた。

「今日は泊まるの?」

「ええ」

「そう。でも本当にいいの?あんなに。前払いも」

「ええ、無理言ってわがまま聞いてもらってますから」

「まあ、大家としてはそうだけどね…。でもあなたならいいわよ」

「ありがとうございます」

「じゃあね」

大家は管理人室の鍵をかけると出て行った。

大家はこのマンションの裏の大きな屋敷に住んでいる。

どうやら、その屋敷もこのマンションも相続物件らしい。


お金で解決してくれるならいいことだと香澄は思いながら、エレベーターのボタンを押した。
 
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