もう泣いてもいいよね
私はその中の見出しの1つを見た瞬間、息が止まった。



そして、記憶の中に断片的な映像が浮かび上がってきた。



誰かの葬式。



黒服の人々。



その祭壇。



二つの遺影。



父さんじゃない。



一つは…



タケルのじっちゃん。



そして、もう一つは…











タケル…





全てを思い出した。


私はタケルとじっちゃんの葬式に参列した。

そして、二つの遺影を見た瞬間に意識を失った。


気がついた時は何事もなかったように自分の部屋で寝ていた…

既に、壊れそうな自分を守るために、その記憶を閉ざしていた…



そう。

よく覚えていなかったんじゃない。

それは「記憶の封印」だった。





見出しにはこう書かれてあった。

『小5 山で転落死 森川村』

記事には、『死亡したのは美平小5年 大和武尊君』そして、その事実を知った祖父が、心臓麻痺で同日死亡したと書かれていた。


じっちゃんとの記憶もその頃から無いのは当たり前だった。



やっぱり、私が、二人を、死なせたんだ…



完全にその事実を意識した瞬間、強烈な衝撃が身体を震えさせた。


震える手がファイルを落とした。


でも、震えが止まらない。

「う、うわ…うわ…うわー!!」

声にもならない叫びが身体の底から出続けた。

床に突っ伏したが、震えと叫びは止まらなかった。

涙で何も見えなかった。


壊れる…

心が壊れるよ!!


その時、誰かが私を後ろから抱きしめた。
 
< 90 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop