もう泣いてもいいよね
タケルが口を開いた。


「確かに…おれはあの日、死んだ…」

「!!」


私は目を大きく開いたままになった。


「そうだよ。あの日死んだんだ。自分とじっちゃんの葬式も見たよ」

「…どういうこと?」

私は振り向いてタケルを見た。

「自分の葬式をじっと見ていたら、後ろから肩を叩かれた」

タケルは私を離すと、座り込んで言葉を続けた。


「綾女様だった」


香澄は壁に寄りかかって下を向いて聞いている。

「綾女様は言った。『皆美を守りたいんだろう?』って。おれは49日過ぎるとこの世にいられないけど、それを13年間は留めることはできるって」


「子守花の力でね…」

ぽつりと香澄が言った。


「そう。あの時は新しい子守花に変わった時だったらしい。だから13年間だ」



「タケルは、あなたを守るって約束したんでしょ?」

私は香澄の方に顔を向けた。


「だから、留まることをばっちゃんに頼んだのよ。だから、ここにいるの」

香澄が言葉を継いだ。


「じゃあ、タケルは……幽霊なの?」

香澄もタケルも無言だった。

二人の表情はそれを肯定していた。


まだその事実が理解できていなかった。


「それに13年って言ったら…」

「そう。この秋まで…もう今の子守花は枯れてしまう」

「それを過ぎたら、タケルはどうなるの?」

「それまでに子守花に触れて成仏しないと、この世に残ったまま…」

「それって…」

「地縛霊。多分、もう自由に動けなくなると思う…」

「そんな!」


「おれは残ってもいい」

「タケル!」

香澄が真剣な顔で言った。


「でも、おれは最後まで皆美を守りたいんだ。守るって約束したんだ」

「…だめだよ、タケル」

私はタケルの目を真っ直ぐ見て言った。

「皆美…」
 
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