記憶が無くなっても君が好き
吹奏楽部のみんなは音楽室だから

今ここにいるのは私一人。

他の3年生は図書室とか家とかゲーセンとか

まぁ、残りの青春を謳歌してるかんじかな。

「あんた、2年?」

1人窓際の席に座って風に当たっていたら

突然声がした。

教室のドアの方にサッカー部らしき先輩。

「あ…はい。そうですけど…」

「ふーん。何でここにいんの?」

首から下げたマフラータオルで汗を拭きながら喋る。

多分、今部活が終わって忘れ物を取りに来たんだろう。

「私、吹奏楽部なんですけど、

コンクールとか出ないんでみんなで合わせてるときは、

いつもこうやって一人でいるんです。」

「なんでコンクール出ないの?」

コンクールに出ない理由。

そんなの特にない。

強いていえば

「誰かに強要されたりするものじゃなくて、

自分の演奏を聞いてほしいから。

なんかみんなと合わせると、演奏させられてるって感じがするんですよね」

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