僕らの夏は、紛れもない青春だった。
夏、



1年で一番大きな行事があった。




今でも、たまに


あのドアを開けたくなる。

美術室のドアを。






古びた校舎の四階、



一番右端にある教室。




ドアに掛かった札に

辛うじて読めるくらいの『美術室』の文字。


ドアを開けると、むわっとした熱気。



夏の暑さが全て


ここに詰まったんじゃないかって程の

息苦しい暑さで、それと同時に

油の臭いが僕らにまとわりつく。




開けた窓からは生暖かい風。



黒いカーテンが重く揺れて、



僕らを照らす眩しい光。



落書きされた机に、



床についた無数の傷と 



飛び散った絵の具の跡。










他の人には分からない、僕らだけの空間。
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