その笑顔はいつかの金魚に
最初
山、山、田んぼ、家、山...。
コンビニがない。美容室がない。そもそもビルがない。

昨日から8時間かけて東京からこの町に来た。親父の会社が潰れて、親父の実家で暮らすことになったのだ。

「のどかで良い所だぞ」
親父は落ち込む様子もなくそう言った。
「田舎暮らしも良いかもしれないわね。お父さんの家広いのよぉ」
母さんは楽しそうにそう言った。
俺は東京の高校を転校して、親父の実家の農業を手伝いながら田舎の高校に通うことになった。

なんでだよ。
放課後カラオケにも行けないで畑仕事?
ありえねえよ。

実家に荷物を置いてからぶらぶら歩いてるけど、まったく人に会わない。
この調子じゃかわいい女の子なんていないんだろうな。
ここの高校生はどうやって遊ぶんだよ。

明日から新しい高校に通うことになる。夏休みは今日で終わりだ。とんでもない夏の終わりになった。
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