彼の一言は私を次々と変える
夏休みとなると、はっちゃける人が必ず出てくる。校長の長い話にもはめを外しすぎず、などとか言っていたがすでに記憶にない。というより、私にははめを外して云々は無縁だから、軽く聞き流した。
宿題は夏休みが始まってすぐにやる方だし、小学生によくある自由研究なんかも早く片付けるタイプで、真面目だとか優等生とか言われることもあった。
真面目とか優等生とか、そんなにちゃんと課題を片付けることが偉いのか、と当たり前だろうに。
だから、真面目だとか堅いとかあの小悪魔に言われてるんだろう。
小悪魔というのは、有香と優衣のことだ。
学年で見ると可愛い分類に入り、大体そういうのは同じような感じで固まる。
「どうして…」
私がそう呟く先には、小悪魔がいた。修二郎や健太らのところに、である。
花火大会はだいたい、地域のお祭りの一部となっている。よってお祭りを楽しんでから花火を!という話だったのだが、何故有香らがいるのか。
「よお」
「あの」
「私ら二人だけじゃつまらないから、一緒でもいいでしょ?」
―――よくない。
有香と優衣は「ねー?」と互いに手を握り「いいでしょ、修二郎」とぼうっとしている修二郎に絡む。一緒にいる健太が困り顔をしていた。ここまで言われたら断れない。
私と美咲は元々、修二郎と健太とともにお祭りと花火大会を見に行く予定だったのだ。
浴衣を着て、せっかく可愛くしたのにこれでは……。
有香と優衣は気合いが入っているメイクに、流行りの派手な柄の浴衣を着ている。小声で「ありゃ絶対狙ってる」と美咲がいう通りだろう。
しかし。
一緒に行動することになってしまった有香は自然に修二郎を巻き込みながら、屋台を指差している。あざといボディータッチはああいうのをいうのか。