彼の一言は私を次々と変える
「菜々美?」
「可愛いよね、あの二人は」
有香も優衣も女子全開!という感じで、一方の私はというと浴衣はシンプルなもので、母が「菜々美には少し地味かしら…」とぼやいていた。私が着ている浴衣は母のもので、私が着るにはちょっと大人っぽすぎるかもと思ったが、美咲は色気ムンムン!と恥ずかしいことを言ってくれた。
この歳で色気って。
修二郎は別に何も言ってくれないし、健太は美咲に「お前、頭に花咲いてるぜ」「なに、蹴られたいの?」と少し話していた。
普段ぼーっとしている修二郎だが、部活中の彼は全然違う。
彼は剣道部だった。
制服姿から、剣道着に変わった修二郎は、格好いい。竹刀を持って素振りをし、部員と打ち合いをしたり、その時は真剣そのもの。ガン見したいが、そんなこと出来るはずがない。だって目立つ。だからガン見ではなく、チラ見しかできない。
休み時間には腹減ったとかいってパン食べてたり、しまいには「お前お菓子持ってないか」と聞いてたり、居眠りしてたりと
のんびりに見えるのに。
つまり、そう。
私は修二郎に片想い中なのである。
そのことを美咲は知っているため、美咲は健太というコネ(美咲と健太は友人、本人いわく腐れ縁)に頼んでお祭りと花火大会に行くことになったというのに。
な、の、に!
小悪魔どころか、有香と優衣が邪魔をする悪魔にしか思えない。
「菜々美の方が照れ屋で可愛いと思うけど」
「ちょ」
「修二郎、菜々美のこと見てたじゃない」
「……」
「ふっふっふ、赤くなっとるぞ菜々美どの」
悪代官みたいなしゃべり方に、思わず笑ってしまう。
「おい、頭に花咲いてる二人、かき氷食うか?」
「足りない頭の健太、イチゴミルク!」
「十分たりてるわ!みっちりな!」
「言い方がキモい」
「びっちり!」
「白川は?」
修二郎が聞いてきたそれに、私もイチゴミルクを頼む。修二郎がなにかしゃべろうとしたのを「私はねー」と有香が入ってきたため、断念したように見えたが…まさかね。
かき氷を待っている中、有香と優衣は私らを空気か何かと思っているらしいとわかる。
こちらをちらりと見るものの、話すことは貴女らにはありません、と言いたげだ。
楽しくない。
はっきり言えば、今すぐにでもどっか行ってよ!である。
そもそも有香と優衣は約束していないのだから。