彼の一言は私を次々と変える
出来上がったかき氷は、修二郎が私と美咲の分を持って渡してくれたが、会話は許さないとばかりに「ねー!ねー!あれ見て!」と有香が割り込む。
肉食系女子とはこのことをいうんだろうけど。
私にも多少、ガツガツ部分があればいいのにと小声でいえば「でもさ、進歩でしょ」と美咲がいう。
「こっそり見ていたのから、話すようになったんだもの」
―――確かに。
同学年とはいえ、全員と話したことなんてない。彼とは多少委員会とか、そんなことで一緒になったことがあるとか、健太繋がりでとかしかなくて。それでも私は、ドキドキだった。一緒の空間にいるだけでもヒイヒイしてた。
彼は私の名前を知っていた。白川と呼んでくれたとき、私がどんな気持ちであったか彼は知らないだろう。
うそ。
今名前、いや、名字呼んだよね。
私のこと知ってる…いや、委員の名前なら目によく入るし、知っていてもおかしくない。おかしくないけど、けど!
―――嬉しかった。
他の子といっしょくたにされず、名前を知られているということが、嬉しかった。たとえ同じ委員なのだから知っていてもおかしくないといっても。
祭り囃子と、山車は灯りがついてキラキラと輝いて見える。
太鼓を叩くのは、小学生だろうか。必死に叩く姿が見えたものの、すぐに見えなくなる。
普段車が通る道路に山車がいて、警察が動いている。歩道には見物する人が増え始め、いろんな音が混じる。
身長がそれほど高いわけでもないし、しかも動きにくい浴衣と歩きにくい下駄という私や美咲は人とぶつかり、「健太!ちょっと!」前のほうにいる修二郎らを見失いそうだった。
知らない人。
若い、茶髪の男性ら。女性ら。
改めてみると、ちょっと怖い。
あ、と思ったときには美咲とも離れてしまい、焦る。
焦っても人混みはどうにもならないし、祭り囃子のように賑やかさは増していく。酒が入った大人が大声でなにやら歌っている。下手にぶつかって衣服を汚してしまったら不味い。
せめて、どこか端に寄れたら。
そう思って人混みから抜けようとしたら、案外すんなり抜けられた。同じように避難してきたのか、または二人の世界に入りかけている男女を隣にしながら、溜め息。