黄金のラドゥール
「ああ、もうお休みなのでしょうか。」
コウジュン皇子の執務室は確か目の前の塔の中だった。
「え?」
「ほらあちらのお部屋ですよ。
もうカーテンが閉じていますね。
これからお会いされるのは難しいのではないでしょうか?」
「そんなことは!
まだこんなに早い時間ですよ?」
「お疲れだったのかもしれませんよ。」
「それにしたってーー、
カーテンを閉めきるのは少し妙じゃありませんか?」
「神官長様、どうしてですか?」
「まだ夕食にも、寝るにしても早すぎます。
まださして暗くもない。」
「大変お疲れなのかもしれませんね。」
疑う余地無しという風にリトは答える。
恋煩いでもするように見つめるのはあの塔にいるはずの、ラドゥールの方向だ。
でもやはり、妙な違和感が消えない。
午前の面会ではあまりに手応えがなさすぎた。皇子とその侍従たちに防がれ、直接ラドゥールと会話を交わすことさえ叶わなかった。
予想はしていたものの、時間も短く、何も得られるところはなかった。
彼女の生の声すら聞けていない。
ーーーやはり、確かめなければ。
「あ、神官長様?!」
ミムリは閉じられた窓の方、
コウジュンの執務室のある塔へ駆け出した。