黄金のラドゥール



「ハルは帰りたい?」

薄茶の瞳が大きく開かれた。



くだらないことを聞いたと思った。

ハルの気持ちは知っている。なのにーー。


ハルの様子が見られなくなるーー



つまらなくなりそうだ。







この娘が皇太子の手の者ではなく、ただの偶然、ただの娘であればよいと
ただそれだけを思っていた。

そう思っていた。



何度口にしてきただろう、
「おまえは私のラドゥールだ」と。




だが今は、、

ニホンなど忘れて私の傍で私のラドゥールであればと願う自分と、
約束したのだ返さなければ、と思う自分がいる。


ふたつの気持ちが入り混じり
私を混乱させる。


こんな気持ちは初めてだ。




今も会議に真剣に取り組む自分と、
ハルのことに気がいってしまう自分がいる。
隣にハルがいない。
後者の自分は、ユンハに護衛を任せたはずなのに、それでもハルは無事だろうかと考えてしまう。

まだ日は高い。ハルが消えることもない。
何か起こるわけもないと否定してみても、最近のユンハの柔らかくなったハルへの態度やガインの社交界での話などが思い起こされ、胸に小さな苛立ちが募る。

「コウジュン様、それでよろしいでしょうか?」
一斉に大臣らの視線があつまる。
「、、ああ、よい。

では今日はここまでとする。」

返答が遅れてしまったが、会議の内容については理解していた。

執務室への道でガインが耳打ちした。
「コウジュン様、どこかお加減でもーー」



コウジュンはぴたりと足を止めた。
「お前のせいだ。」



ガインが驚いた顔をした。

それを見てようやく胸がすっとしたような気がした。


「花祭りには、私がハルを連れて行くからな!」


今はまだ私のラドゥールだ!


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