黄金のラドゥール
その時、つかつかと靴音を響かせ割って入ってきたものがいた。

「皇太子殿下!コウジュン兄上!

お二人共、こちらでしたか!」

高らかに響く声。

「ケイジュン?そなたが何故ここへ。」

柔かな微笑みが場の空気を変えた。

「今は話の途中だ、後に致せ。」

「お話とは、あの天からのラドゥールのことではございませんか?
その話、是非私もお聞きしたく参ったのです!」

「なに?」
皇太子は訝しんでケイジュンを眺めた。
コウジュンもケイジュンへと視線を移した。


「倒れた娘が既に回復に至っているというのだから、城下の至る所、この話でもちきりですよ!ねぇ、兄上!」

「おお!!ケイジュン皇子様、その話はまことで?!」
大臣たちがどよめいた。
「まことかどうか、私も兄上に確かめたくて参ったのですよ。」
ケイジュンは嬉々としてコウジュンの傍に寄った。
「兄上?その話ではなかったのですか?」

大臣たちは「やはり天が、、」「第3皇子は天から恵みを賜ったのだ」口々に囁きあう。

旗色が変わりはじめた。


「ラドゥールは回復に向かっております。」

「おお!!」
「やはり!」

もう皇太子の声は届かないほど大臣たちはざわめき、詳しく聞こうとコウジュンに詰めかけていた。
皇太子はいまいましそうに席を立った。
ガエンザ無しでこの場を開いた皇太子の失策だった。
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