黄金のラドゥール
「コウジュン皇子、私は伝説に絡んで王家の系図を調べておりました。
その時、伝説で降りてきたとされる初代王妃の没年が明記された資料がひとつもないことに気がついたのです。」

コウジュンは眉を寄せた。
没年が不明とは、聞いたこともない話だった。だが、いつどのように亡くなったかなど疑問に思ったこともなかった。
国王はあまりに有名だったが。


「没年も死因も記載がなく、歴史から突然姿を消されています。なぜかーー?」

ミムリはコウジュンを見つめる。
「恐らくです。
これも私の推測ですが、
ですがそうすると、今回のラドゥールが降りてきた件も同じだと思われるのです。」

コウジュンの眉根が寄る。

ミムリはそこでもうひとつ分厚い本を取り出した。
「月光に消えたのではないかと思われます。」

そこには初代が娘を賜った歴史的瞬間が描かれていた。
輝く月から降りてくる女を、王冠を被った男が迎えている。


「よくある宗教画のようですが、、
その絵はお城でも見かけたことがありませんね。」
ガインがつぶやくように発言した。

「はい、これは神殿に代々伝わる歴史書ですからね、お城の物ではありませんので。
この絵の、ここをご覧下さい。」
光り輝く満月と、その横に赤く輝く星が見える。


「この赤い星です。」
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