黄金のラドゥール
愛しのラドゥール③
かくして時間はあっという間に過ぎ、いよいよ式の日が迫っていた。



執務室に入るなりユンハは眉根を寄せた。
「なんだこの重たい空気は。」

壁際にへばりついたガインが目線で知らせる。
執務机に突っ伏し、それはそれは重たい空気を出しているのはハルだった。まだ午前だというのに部屋中のカーテンも閉ざされている。

部屋の主人は明日の準備に向けほとんどの時間を不在にしていた。

国中が喜びに沸き立つなか、ここの空気は凍りついたように冷たい。
喜ばしい婚姻の前とはとても思えない。



その明日の式にハルが出ることはない、と知らされているユンハも、ハルにかける言葉を見つけられず、ガインと並び壁際に張り付くことを選んだ。


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