黄金のラドゥール
いつの間にそこにいたのか、いや、もしかしたらずっと居たのかもしれない、ガインが片膝をついてハルのそばにいた。

「私、何も言ってなーー、」

「どうぞ、こちらで涙をお拭き下さい。

コウジュン様は最初から自分なんて信じていなかった、そんな風に心を痛めていらっしゃるのではありませんか?」

ハンカチで目元を押さえたまま手が止まる。

「ハル様は分かりやすい方ですね。」
ハルは褒められていないことがわかり、複雑な心境だった。
ガインは続ける。

「どうぞ、お心にお留め置きください。
もうすでに事は始まっているのです。
天からあなたが降りてきた時から。」

ガインは小さく咳払いした。
「コウジュン様はあなた様をその腕に抱き上げた時から決めておられたようです。

あなた様をラドゥールとして受け入れ、お守りすると。



危機迫った状況で他に方法がなかったのも事実ですが、それでも、一切を飛び越えられてお決めになられたのです。



私にはハル様のニホンという国が天にあるのかどこにあるのか、わかりません。ですが、


コウジュン様はそれらも飛び越えて、
命を懸けていらっしゃる。
その事はどうぞ、ご存知でいらして下さい。

決して、その場しのぎや半端なご決断ではないのです。

いいですか。
皇子は、始まりは生き延びるためだったとはいえ、信じる、信じないを越えて、あなたを守り抜くお気持ちなのです。

でなければ、あなたを守りぬけなければ、望まぬ道しかありませんからね。



ここからは私個人の意見で申し上げます。
ですから、あなたにも命をかける覚悟で臨んでいただきたいのです。」
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