黄金のラドゥール
皇太子リジュン
ーーー皇太子リジュンの執務室

怪しげな香が漂っている。
幾重にも薄いヴェールが張られた中、
影が浮かぶ。


「そうか、あやつは悔しがっていたか、

ふふ、ふははははっ!」
密偵の報告を受け、
リジュンの笑い声が響く。



金の扇子をしゃらりしゃらりと弄ぶ。
細く切れ長の瞳をさらに細めると、リジュンは囁く。
「よいな、次こそは。
その次はないものと思え。」

「既に手は打っております。」
しゃがれた声が返った。

「ガエンザ、あの女の正体は掴めたか?」

「おそらく、あの肌の白さは北方の出身かと。婚姻の決定により遠方へ飛ばされることを危惧した第3皇子の自作自演かと思っておりましたが。」

「うむ、なるほどのぉ。都落ちは嫌であろうのぉ。だが違ったのか?」

「皇子の側近たちもあの女の正体を探っているようです。北方の新興国を疑っているようですが、調べの手は現在までそれ以外へは伸びていない様子から、まず間違いないかと存じます。」

「辺境の新興国の女?それがなぜあの時?
はっ、まぁ、よい。そんな新興国の女ひとり、事ではないわ。大方さらわれて来たか、逃げて来たかで紛れ込んだのだろう。間の悪い。」

「左様でございますな。」

「その女も、ついでに片付けてしまえ。」


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